子供たちからの声

このサイトは、紀藤弁護士・HTPのメンバーたちのために、言われもない虐待の疑いをかけられた子供が、
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第五-40

86 そして、A学に見学にゆく28日の朝が来ました。
TNケースワーカーが保護所に来て、私は一緒にタクシーに乗り込みました。
保護所からだいぶ離れた頃、それまで走っていた国道から横に伸びた細道に車は移り、景色はどんどん街から田園地帯へと、変わっていきました。
人里から離れた、畑と田んぼだけが広がる中に「A学園」は建っていました。
タクシーから降りた私達はその佇まいに、息を呑みました。
TNケースワーカーは「山篭り」と譬えましたが、私には保護所の先生方の言っていたとおり、「少年院」にしか見えませんでした。
奥から寮長さんがやってきて、私達は「女子寮」を案内されました。ここに住む子供達は皆隣に建っている「学校」に行っているために、人気(ひとけ)がなく、伽藍堂でした。廊下沿いに並ぶ、子供達が住む部屋も見せて貰いましたが、「これ、部屋だったんだ!」と思ってしまうほどに小さくて、その部屋には4人もの女の子が住んでいると聞いて、更に驚いてしまいました。廊下沿いに部屋が並び、窓には子供達が逃げ出せないように鉄格子がついています
。扉は引き戸式で、中の様子をすべて見渡せる部屋は、少年院というよりも、テレビで見たことのある「刑務所」を思わせる造りでした。
「学校」の中は見学せず、外の庭を一通り一周して、また女子寮に戻り、今度は寮長さんから、A学園での暮らしについて、説明を受けました。
説明では、A学園は全寮制で、ほとんどの人が18歳になるまでA学園で暮らします。A学園に入園する際、それぞれ個人用の口座が作られて、月に一度、「お小遣い」が振り込まれ、月に1〜2回程度、買い物に行って文房具などを買い揃えることができるそうです。
これまでいた一時保護所の、「週に1度の所外学習」すら、待ち遠しく思えることなのに、月に1から2回しか、施設外に出られない生活の想像はつきませんでした。
それに、決まりは沢山あり、髪形・服装は規定の長さ・指定された服装をします。女の子は肩につかない長さ、男の子はスポーツ刈りになります(特に「不良」な男の子は五分刈りになるそうです。)。
また、部活の時間は決して「笑ってはいけない。」、「歩いてはいけない。」、「遅刻は絶対に許されない。」…などの規則に沿った生活を送るそうです。
私は寮長さんに「規則を破ったらどうなるのですか?」と質問をしてみました。すると「全員で集まって、その子が犯した問題について、今後二度とないように皆で話し合う。」という答えでしたが、果たして本当にそんな生易しいもので済まされるのか、私には信じられませんでした。
ふと、一時保護所に私たちが行ったばかりの頃、泣きながら「A学園に行きたくない」と言っていた女の子のことを思い出しました。私は「M美ちゃんは、元気に暮らしていますか?」と質問しました。寮長さんは「ああ、あの子ね。元気ですよ。まぁこの間ちょっと何か起こして、皆で話し合っていたけど、今は大丈夫。」と笑いながら答えました。
また、「家族の状態によっては、夏休みや冬休みに帰郷も出来るし、A学園の中に、家族と一緒に泊まれる小屋があるから、そこで一緒に過ごすことも出来る。」、「しかし、夏は部活が結構忙しいよ。A学園ってね、この辺の施設の中では一番強いんだよ。毎年優勝してるし、何度か関東大会まで行ったからね〜。」と言われました。
私が「じゃあ、部活の練習はプライドがかかってるから、相当きびしいでしょうね。」と言うと、「厳しいよ!みんな死にもの狂いでやっている。でも優勝したときの達成感は感動するよ!」と笑顔で答える寮長さんでした。私は、この寮長の笑顔に、何かそら恐ろしさを感じました。
また、「親からの手紙は原則として、職員が中身を確認してから渡すことになっている。たまに、手紙の中に『カミソリ』が入っていて、手紙に『○○へ、一緒に死にましょうね。』なんて事が書いてあったりするからね。」とこんな内容の話を何気なく、普通に話している寮長さん達を見て、本当に怖くなりました。
一時保護所でも、ビックリするようなことばかりが続くのに、ここはもはや刑務所じゃないかしら。やっぱり保護所の先生達、子供達が言っていた事は本当だった。
私は「もう、ここは尋常じゃない。ここは刑務所そのものだ!」と心で叫びました。
もうここにはいられない。もう耐え切れない。と思った頃に、すべての説明が終わり、私達はA学園のパンフレットを手に、タクシーに乗り込みました。
周りは美しい田園風景だというのに、A学園に立ち籠める雰囲気は、尋常ではない、なんとも言い表せない恐ろしいものでした。
色でたとえるなら、「グレー」といったところでしょうか、ユダヤ人が次々と、殆どの場合躊躇いなく銃弾が撃ち込まれたり、アウシュヴィッツ強制収容所に送り込まれてガス室で殺される、映画「シンドラーのリスト」の世界に放り込まれたかのような、何とも暗く、裏に何か隠されているかのような恐ろしさを持った施設でした。
…思いっきり書いていますが、これが、私の赤裸々な心境です。



第五-41へつづく

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最終更新:12月18日

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