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第三
21 車は、もう黒磯市内を走っていました。後ろを見ると、車が一台、中には児童相談所のTさんが運転席に座り、助手席にホームオブハートの会長の桃井さんが、後部座席にMEmamaさんが乗って、ついてきてくれていていました。私が後ろを向いたことを気がついた桃井さんが、ニッコリ笑って手を振ってくれました。「安心していいよ。私達がついてるから。」と言っているようでした。その笑顔に、私は少しだけ心が楽になりました。
車の中で、妹がとても怯えた顔をして、私に振り向きました。私は手を伸ばし妹の頭をなでながら、「怖がらなくていいよ。私がいるから。」と言ってあげたのですが、妹はすっかり怯えきっていて、何度も何度も泣き出してしまい、私はそんな妹がとても可哀想で、仕方がありませんでした。
22 車は日赤病院に止まりました。私は最初「ここが児童相談所?」と思いましたが、「日赤病院」と、看板が立っていたから、
「えぇ?どうして病院に??!!」
とビックリしてOさんに
「ここで降りるんですか?」
と聞いてみました。
Oさんは
「Cちゃん(妹の名前です)は、健康チェックをするから、一旦ここだよ。」
と言われて、そのまま妹は抱きかかえられて、連れて行かれてしまいました。
「何で?!妹だけが連れて行かれるの??何で?どうして?」
と、一体どうなっているのか、さっぱりわかりませんでした。私は妹とはこの時以来、二ヶ月間もの間、会えないままになってしまいました。
23 Iさんが妹を病院へ連れて行った後、私とMEちゃんと、Oさんと、運転手さんは車の中で待っていました。その間、無言だったのか、ここでOさんやMEちゃんと話をした記憶はありません。私は話をする暇もなく、妹のことばかりを考えていました。
「なんで、妹を連れて行っちゃうんだろう。私も一緒について行きたかったのに。一人ぼっちでひどいじゃないか。」
突然、車の窓が「ドン!ドン!」と叩かれたので、私とMEちゃんは振り向きました。車の外には、シャーマンちゃん(当時11歳 お母さんがトシオフィスで働いている子です。)が立っていました。私とMEちゃんは「おー!!シャーマンだー!!!」と驚き、喜びの歓声を上げましたが、
「一体、どうしてシャーマンがここにいるんだーーー!?!?!?」
と、驚きました。
24 シャーマンちゃんとは、平成15年9月16日に東京都のすみだトリフォニーホールでの、MASAYAさんのコンサートで知り合って以来、時々いっしょに遊んでいた友達で、シャーマンちゃんのお母さん(Mmamaさん)が株式会社トシオフィスに勤めていました。もともとは、Mmamaさんとシャーマンちゃんは,私の母が勤めていた屋久島のホテルのお客さんでした。私と姉で東京のぶたママさんのところにいた時に、母が姉の携帯に電話をかけてきて、
「あのね、ブーちゃんマンちゃん達にそっくりな子供達が泊まりに来たんだよ。お姉ちゃんと弟さんの姉弟なんだけど、小さい頃にお父さんをガンで亡くされていて、本当にブーちゃんマン達とそっくりな子達だった。」
と、言ってきたことがありました。私はこのときに、シャーマンちゃんのことを知りました。最初は「ふーん」と思っていましたが、初めてコンサート会場で会ったとき、
「あ、この子がお母さんが言っていた子なんだ!!」
と、ビックリしました。このコンサート以来、私とMEちゃんとシャーマンちゃんは、時々一緒にイチゴ狩りにいったり、公園で遊ぶようになりました。シャーマンちゃんも福岡から黒磯市に引っ越していたので、近所というほど近くではありませんでしたが、よく一緒に遊びました。特にMEちゃんとシャーマンちゃんは、趣味も好みも似ていてすぐに気が合い、べたべたの仲良しになっていました。私にとっても、シャーマンちゃんは大切な友達でした。
25 まさか、シャーマンちゃんの所にまで児童相談所が行っていたなんて、その時は思いもよりませんでした。このときは偶然、シャーマンちゃんがいたんだと思っていました。後でシャーマンちゃんから聞いたのですが、シャーマンちゃんのところにも児童相談所と警察とマスコミが来ていて、私達と同じようにシャーマンちゃんと当時2歳だったT君はタクシーで連れ出された、そして、T君も妹と同じく身体検査のために日赤病院に連れて行かれたところだったそうです。タクシーに乗っていたシャーマンちゃんは、車から連れ出される妹の姿を見つけて、
「あ?あれはねずちゃんの妹?」と思い、シャーマンちゃんと一緒に乗っていた児童相談所の人に
「トイレに行きたい。」
と言って車から降りて、妹が出てきた車に近づいてみたら、私とMEちゃんが知らない人と一緒にタクシーに乗っていたので、とても驚いたそうです。
26 シャーマンちゃんとの出会いは、これまで、沢山の知らない大人達に囲まれて、犯罪者みたいに家から出されて、ほとんど強制的にタクシーで連れ去られ、怖いし頼りになる人が誰もいなくて心細い思いをしていた私達にとって、やっと仲間に出会うことが出来た瞬間でした。私とMEちゃんは、シャーマンちゃんとガラス越しに手を合わせました。一緒にいた児童相談所の人に急かされたのか、シャーマンちゃんは、急いで手を振って、病院の方へ走っていきました。私の隣に座っていたOさんが
「知ってるの?」
と聞くので、
私は
「友達です。時々一緒に遊んでいます。」
と言いました。
Oさんは「ふーん、そうなんだ。」と言って、その話はおしまいになりました。Iさんが戻ってきて、今度こそ児童相談所へ向かうため、出発しました。もう、外はすっかり真っ暗でした。途中、IさんやOさんから、
「心配?」
と聞かれました。私は
「そりゃもう、心配で心配で仕方がありません。早く帰りたいです。」
と答えました。一体この人たちは私達のことをどうする気なんだろう。私達はこれから、どうなってしまうんだろう。と、自分達がこれからどうなってしまうのか、心配で心配で震えが止まりませんでした。途中で、「ご飯を買おう。」という話になり、コンビニに止まり、Iさんが買いに行きました。その間、私達は車の中で待っていました。
「一体、いつになったら、私達を家に帰してくれるのかな…。早く帰りたい。」と、いう心境でした。